抜けるような青空が見え、眼下には深い森。
緑が騒ぎ、大気に震える森が高らかに詩っているようだった。
『我が掌に集まりし原素よ、その力、我に示めさん…』
少年の掌には火の粉が集まり、やがて大きな煌きとなって
周りの木々を燃やさんばかりに紅く燃え始めた。
『散!』
一瞬にして消えた炎はまた火の粉となり、あたかも
少年の周りで戯れるが如く纏わり、そして宙へ消えた。
「あ?あ…ほんとにこんな事しかしてなくていいのかよ…」
手を払い、先ほどまでの感覚を弄びながら、基礎を
続けさせる兄と父に対して、疑念を抱いていた。
「痛っ!ん??」
背後から小石のようなものが飛んできて当たり
森の木陰から、一陣の風と共に小柄な少女が現れた。
「へへ?☆あったりぃ♪油断してるからそういう事になるのよ」
「んだよ蒼華か…。戦闘中でもねぇのに気が付くわけ…」
「『戦士は常に冷静であれ』じゃないの?」
「っぐ…」
「私の勝ち?♪」
「余計なお世話だっつの!」
「痛った?い、朱漣が殴ったぁ?↓↓↓」
「大して痛くもないくせに。で、お前は何しに来たんだよ?」
「一人で修行してて、寂しくないかなぁって思ってさ♪」
「おおかた兄貴に頼まれたんだろ?お前、兄貴にベタ惚れだしな」
「はぁ!?ちょ!な、何言ってるの!?なんで私が橙地さんを…」
「いいよいいよ、いまさら隠さなくても」
「だからぁ…」
バサバサバサ…
「あれ?兄貴の式鴉だ」
「シュレン…ソウカ…ニゲロ…」
「?」
「?」
シュウ…
「兄貴の式鴉が…」
「消えた…」
「!!」
「朱漣?ちょ、ちょっと!」
「今の伝言!それに式鴉が消えるなんて…何か…何かあったんだ!!」
空が騒ぎ始めていた。少年の心と同調するよう。