漆黒の斬撃

東京砂漠に生きる役者が、主に物語を書き綴るブログです。つたない文章ですが、お付き合い頂けたら幸いです。

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  再会。
「トシ?どした?」
「え?ああ、いや」
「?ああ、あれか」

お化け屋敷の代わりに、一昨年辺りから
登場したというミラーラビリンス。壁一面に
万華鏡のような柄と、ピエロが描かれていた。
思い出のお化け屋敷は、役目を終えて消えたらしい。

この神社は、比較的大きめの木が多いせいか
外灯だけの明かりだと妙に薄っすらとしている。

神社という特殊な場所だけに、それこそ老若男女を
問わず、毎年深夜近くまで盛況だった気がする。

あの夏、初めて倉石と二人きりになった場所だった。
あのときの手の感触は、今でも鮮明に思い出せる。
体中の神経と血管が手の平いっぱいに集まったような
そんな感覚。自分の鼓動が全て伝わりそうな距離だった。

「あれ、流行ってんの?」
「ん?まぁ、ぼちぼちな」
「ふ?ん。ぼちぼちね」
「なんなら入ってみる?」
「いいよ」
「なんで?」
「お前が二十人も三十人も居たらキモいからな」
「あ、なるほどね。俺と同じ意見だ」
「おいっ」

バカな話をしながら、俺たちは神社を出た。段々と
人混みも増してきて、商店街が祭り特有の熱気を帯びてきた。

来た道とは別のルートを通って盆踊り会場まで歩く事にした。
東京でも夏祭りに出掛けた事はあったけど、やっぱり地元の
祭りが一番落ち着く。それはもちろん単なる気持ちの問題で
どっちが派手かと言えばもちろん東京だけど、愛がある
祭りだと感じられるのは、こっちの祭りだなと思った。

人の喧騒に負けじと、セミたちも自己主張を繰り返している。
セミにしても、東京じゃほとんど鳴き声を聴く機会は無かった。

逆にあんなコンクリートジャングルで鳴き声を聞けたら
嬉しい反面、それはそれでなんだか薄気味悪い。街には街の
町には町の、それぞれの特色があるから個として存在出来るんだろう。

こんなにも落ち着くのに、ほんの二日前までは、いつの間にか
無機質な森林に囲まれて居る自分になんの違和感も感じなくなっていた。

足早に行きかう人々に紛れて、足を踏まれても肩がぶつかっても
まるで気が付かない。立ち止まりせず、謝りもしないで
通りすぎていく人々に紛れた生活。そんな一日が普通になっていた。
それは、適応なのか堕落なのか…どちらにしろ、俺は変わった。

途中で見つけた焼きそばの屋台前を通り過ぎようとしたら、ビールを
飲んでいたらしい若者に、スーツを着た男が何やら説教を繰り返していた。

父親との揉め事か酔っ払いか。そのまま通り過ぎようとしたら、不意に
男が声をかけてきた。

「あれ!悠太じゃんか」
「おお、浩平じゃんか!もしかして見回り?」
「おう。こいつら、うちの生徒。ったく浮かれやがって」
「おーおー、バッチリ熱血先生してんじゃん」
「まぁな。ってこら!飲むなっての!!」

俺の知らない悠太の友達だった。大学の友達だろう。
悠太にも、俺の知らない時間が流れているんだと思うと
理不尽だけど寂しい気がした。俺だって悠太の知らない
時間を過ごしているくせに、自分勝手な感情だ。

「そういや、今日は嫁サンと一緒じゃないのか?」
「ん…ああ、幼馴染が久し振りにこっちに帰ってきてたからな」
「どうも。俺は安田浩平。大学の悪友」
「悪友言うな」
「あはは、やっぱり大学行っても悪いヤツだったんだな」
「お前らなぁ」
「あ、俺は飯塚明俊。15年来の悪友、ってとこかな?」
「悪友の先輩さんでしたか、これはどうもどうも」
「スキニシテクレ」
「ってあれ?なんだよ、結局嫁サンと待ち合わせてるのかよ」
「え?」

その時の悠太は、本当に驚いた顔をしていた。いきなり
宝くじが当たったような、総理大臣に任命されたような
人間が驚く瞬間の顔っていうのは、どんなときもそんな顔だ。
そして悠太の視線に合わせて振り返った俺も、同じ顔をした。

まるでアニメのように周囲の時間が止まったような気がした。
実際、止まっていたかもしれない。俺は呼吸をするのも
忘れたように、生暖かい風とセミの声だけを感じていた。

視線の先にいた浴衣を着た女性は、倉石真奈美だった。
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2007/07/10/Tue 00:06:43   光速道路/CM:1/TB:0/



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