漆黒の斬撃

東京砂漠に生きる役者が、主に物語を書き綴るブログです。つたない文章ですが、お付き合い頂けたら幸いです。

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  【陽炎の海】プロローグ
『絶対に…絶対に超えてやる!!!!』

少年は咆哮した。誰も居ない空へ、誰もが見ている空へ。
そして、自分自身へ。幸福の終わりであり絶望の始まりである
咆哮は、悠久とも思える時間、虚空を彷徨った――――――。
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2005/04/22/Fri 00:39:23   陽炎の海/CM:0/TB:0/



  【陽炎の海・第一輪】『足音』
抜けるような青空が見え、眼下には深い森。
緑が騒ぎ、大気に震える森が高らかに詩っているようだった。

『我が掌に集まりし原素よ、その力、我に示めさん…』

少年の掌には火の粉が集まり、やがて大きな煌きとなって
周りの木々を燃やさんばかりに紅く燃え始めた。

『散!』

一瞬にして消えた炎はまた火の粉となり、あたかも
少年の周りで戯れるが如く纏わり、そして宙へ消えた。

「あ?あ…ほんとにこんな事しかしてなくていいのかよ…」

手を払い、先ほどまでの感覚を弄びながら、基礎を
続けさせる兄と父に対して、疑念を抱いていた。

「痛っ!ん??」

背後から小石のようなものが飛んできて当たり
森の木陰から、一陣の風と共に小柄な少女が現れた。

「へへ?☆あったりぃ♪油断してるからそういう事になるのよ」
「んだよ蒼華か…。戦闘中でもねぇのに気が付くわけ…」
「『戦士は常に冷静であれ』じゃないの?」
「っぐ…」
「私の勝ち?♪」
「余計なお世話だっつの!」
「痛った?い、朱漣が殴ったぁ?↓↓↓」
「大して痛くもないくせに。で、お前は何しに来たんだよ?」
「一人で修行してて、寂しくないかなぁって思ってさ♪」
「おおかた兄貴に頼まれたんだろ?お前、兄貴にベタ惚れだしな」
「はぁ!?ちょ!な、何言ってるの!?なんで私が橙地さんを…」
「いいよいいよ、いまさら隠さなくても」
「だからぁ…」

バサバサバサ…

「あれ?兄貴の式鴉だ」
「シュレン…ソウカ…ニゲロ…」
「?」
「?」

シュウ…

「兄貴の式鴉が…」
「消えた…」
「!!」
「朱漣?ちょ、ちょっと!」
「今の伝言!それに式鴉が消えるなんて…何か…何かあったんだ!!」

空が騒ぎ始めていた。少年の心と同調するよう。
2005/04/26/Tue 19:50:46   陽炎の海/CM:1/TB:0/



  【陽炎の海・第二輪】『胎動』
ガサガサ…ガサガサ…ザザッ!

「ちょ、ちょっと朱蓮!待ってったら!!」
「うるさい!急げよ!」
「そんなに急ぐような事?だって何かの間違いかも…」
「兄貴が間違いや冗談であんな事するか!?」
「そ…それはそうだけど…」
「式鴉が消えるなんて…絶対兄貴の身に何かあったんだ!」
「……」

『たゆたう自然の子たちよ、その力、我に示さん…』

少女の掌から放たれた風は少年の体に纏わり、戯れ始めた。

「急ぐんなら…こっちの方がいいでしょ?」
「ああ」

『翔風の舞・脚!』

纏わり始めた風は少年と少女の足に集まり、その体を
風のように軽くした。まるで一つの音楽のように
風と森が心地よい音を奏でながら、彼らは森を駆け抜けた。

「朱漣、平気?大丈夫?」
「ん…やっぱ風は慣れねぇけど大丈夫、急ごう」
「うん…でもどうしていきなり式鴉が消えたり…」
「可能性は…2つ…」
「うん…」
「術者である兄貴が気を失ったか…あるいは…」
「…」
「気を失う以上の…」
「そんな事ないよ!」
「俺だってそんな事考えたくねぇよ!」
「ごめん…」
「あの伝言が間違いじゃなかったとしたら、兄貴の身に
 何かがあったことは確かだ…」
「…」
「だけど兄貴の身に何かがあったんだとしても、一緒にいる
 親父たちは一体何をしてんだ…?」
「そう…だよね」
「『逃げろ』って一体どういう意味なんだ…?何から逃げるんだ?」
「逃げる…まさか…」
「まさか?」
「まさかそんな…第一、結界が張ってある限り…」
「蒼華?何か知ってるのか?」
「あ…ううん…分かんない…ただ…」
「ただ?」

キーーン……

「なに?」
「この耳鳴りは…」

『君かい?橙地の弟というのは…』

「え!?」
「これは…兄貴の『伝心術』!?」

『君が…"眼"の持ち主だね?』

「この声は橙地さん…じゃないよね?」
「なんなんだ!?お前は誰だ!?」

『質問をしているのは……僕の方だ!!』

「な!?」

大気が震え、彼らの纏っていた風が一瞬にして消滅した。

「朱漣!?」
「平気だ!けどなんで急に風が!?」
「わかんない!」
「なんか胸騒ぎがする…もうすぐ結界点だよな?急ぐぞ!」
「うん!」

『さぁ…君たちに現実を見せてあげよう…』

「蒼華…」
「え?」
「ここ…一体どこなんだ…」

目の前の光景を、悪夢だと思わずにはいられなかった。
2005/05/03/Tue 03:53:01   陽炎の海/CM:0/TB:0/



  【陽炎の海・第三輪】『現実』
朱漣が住んでいる村は自然と共に生きている。それがヒトの
あるべき姿だと、そう考えているから。家族は父親と兄だけ。

母親は昔の大きな戦で朱漣を生んですぐに死んでいる。
朱漣は自分の母親の事をほとんど覚えていない。唯一の
記憶は、優しい笑顔と、キンモクセイの香りだけ。

蒼華の家とは隣同士で父親同士が昔馴染み。母親のいない
彼にとって、蒼華の母が彼の母親代わりだった。だから蒼華とは
兄と一緒によく遊び、昔から三人いつも一緒だった。

そのうち、兄が戦士としての修行をするようになってからは
あまり三人では遊ばなくなった。自然と、蒼華ともただの隣人同士の
付き合いになっていったが、彼は蒼華を妹のように思っている。

そんな蒼華の父と彼の父親は『終焉の双龍』と恐れられた
戦士だったが、大戦後に生まれた彼には全然実感が無い。
家ではいたって普通の父親だからだ。

双龍はこの世界を二分する大きな戦があった時、ある人の
手助けをしていた。今、この世界の三分の二以上を領土とする

【ジーフォルン国の王・ゼギウス】

それが彼の父と蒼華の父親である『終焉の双龍』の従う人だった。
やがて大戦が終わり、ゼギウスが国をまとめはじめた。
双龍は一族の元に帰り、家族と共に平和に暮らしていた。

ところが、そんな平和を打ち砕くかの如く、ゼギウスが
自然の摂理に逆らう行為を認め始めた。志を同じにしたはずの
彼が手にし、穏やかに暮らす人々の平和を打ち砕いたモノ…

?気壊?

自然の摂理である『気』そのものを『壊す』ことによって
人工物を創造し、自然との調和を放棄し、人工に
生み出したまやかしの幸福にすがるようになった。

ジーフォルンの悪行を耳にした彼の父は、たった一度だけ
昔話を朱漣に切々と語った。父親が生涯、ただ一度だけ愛した
母の墓前の前で、その命日を憂いながら…。まだ当時
10歳だった朱漣には理解出来なかったが、父は話続けた。

朱漣は王を《悪》だとは思わなかった。大勢の人々が暮らし
やすいようになるのであれば、そうしたい人はそうすればいい。
だけど彼のそんな考えは甘かった…。ゼギウスは気壊を
使って武器を作り、武器は弱者と強者を作り、強者は
支配を作り、弱者は嘆きを作り、世界は混沌に包まれ始めた。

そんな中でも、朱漣の一族やこの土地の部族の人々は
代々の教えに従い、自然に身を委ねていた。何度か
ジーフォルンからの襲撃はあったが、兄や村の人たちが
応戦し、気壊にも負けない結界も張った。彼は、そんな
みんなの力になりたくて、必死で力を手に入れようとした。

朱漣の一族は【気術】を操ることが出来る。

体内に流れる気・内気
自然に流れる気・外気
人の心に宿る気・禅気
人の魂に宿る気・護気

これら四気を自在にコントロールする術を
【気術】と言い、その中でも高位の技がある。

【言詩力】?げんしりょく?

内気・外気を練り合わせ
禅気によって増幅し
護気を以ってして発動する
すなわちそれを【言詩力】と云う


他の部族にも【気術】を操る部族はあるが、高位術である
【言詩力】を扱えるのは朱漣の部族のだけであり
しかも【伝心術】は彼の兄のオリジナル。だから
他人、ましてや常人に扱えるはずがなかった。





『君たちに現実を見せてあげよう…』


声の主は確かにそう言った。一瞬の出来事と状況に
頭が追いつかなかったけど確かにそう言った。

あいつがそう言った瞬間、結界を抜けた俺たちが見たのは
俺たちが生まれ育った村ではなく、全てが土と化し
砂と化した、ただの『思い出の残骸』だった…

2005/05/26/Thu 04:52:37   陽炎の海/CM:0/TB:0/



  【陽炎の海・第四輪】『覚醒』
「なんだよ…これ…」
「父さん…?母さん…?」

少年たちは驚愕した。自分たちの村が、家が、まるで
巨大なモンスターに踏み潰されたように無くなっていた。
いや、破壊されていた。食べられたような、えぐられたような
とても形容しがたい惨状だった。ところどころに火も上がっていた。
全ての物に見る影が何もなくなっていた。ほんの数時間前までは
見慣れた風景だった場所が、全く別の異世界にでも来たような風景だった。

「ねぇ…朱漣?ここ…私たちの村だよね…?父さんは?
 母さんは?村のみんなは…?」
「蒼華…現実から逃げるな…戦士なら…自分の目を信じろ…」
「だってこんな現実…」
「俺だって信じたくねぇよ!!!!」
「……」
「とりあえず、お前の風で急いで村中を回って
 誰か生存者が居ないか調べろ」
「……」
「蒼華…悲しむ前に、今自分たちに出来る事をやろう。
 な?もしかしたらここは俺たちの村じゃなくて…
 何かの罠でみんなどこかに連れて行かれてるだけかもしれない。
 まずは現状を把握しよう。悲しむのは…それからだ」
「……」

少年は少女をそっと抱きしめた。気丈そうに見えた少女は
小刻みに身体を震えさせていた。少年は優しく少女を包んだ。

「少しは…落ち着いたか?」
「うん…」
「翔べるな?」
「うん…」
「頼む。俺も何か手がかりがないか調べてるみる。
 何かあったら【気笛】を鳴らしてくれ」
「朱漣…」
「ん?」
「朱漣まで…消えないでね…?」
「絶対に手がかりを見つけよう…」

小さな頷きとともに少女は翔んだ。

  俺もなにか手がかりを見つけよう。だけど…蒼華には
  ああ言ったものの、俺は半ば諦めていた…冷静で
  いられたのは心のどこかで無駄だと悟っていたから
  なのかもしれない。戦士としての直感…。きっと…
  ガーフォルンに攻め込まれたんだ…。さっきの声…
  あれはきっとここを襲った奴なんだろう…。
  兄貴の式鴉が消えたのも…式鴉で兄貴が逃げろって
  言ったのもきっと村が襲われたから…。それでも
  納得がいかないのは【伝心術】だ。どうして兄貴の…


『眼の持ち主よ…』


  まただ!!一体どうして兄貴の【伝心術】を!?

「お前は誰だ!?どうして兄貴の術を!?眼の持ち主ってなんだ!?
 この村を襲ったのもお前なのか!?」

『だったら…どうするんだい…?』

「決まってる…お前を…ブチのめす!!!!!」

『ふぅん…君のその気概に敬意を表して…少し遊んであげるよ…』

刹那、空間が悲鳴をあげるように空気がねじ切れたような
感覚が少年を襲った。そして、少年は大人三人を
担いでいるような、すさまじい重圧を感じた。少年の
眼前に、二人の男が現れた。1人は地に伏し、もう1人は
その男を見下ろすかのようにまるですべての支配者のように
威風堂々と、獲物を射抜くような眼光で少年を見据えた。
その二人は、どちらも少年にとって見慣れた顔だった。
  
「兄貴…」
「「ふ…君の言う兄とは…コレの事かな?」」
「がはっ!」

地に付していた男が、頭上の男に蹴圧され、鮮血を流した。

「「眼の持ち主よ…先程の勢いはどうしたんだい…?」」
「しゅ…れんか…?やめろ…弟に…手を…」
「「お前は…黙ってろ」」
「ぐっ…ごふ!」

  立っていた男が地に兄貴を押しつぶした…。手も足も
  触れていないのに…眼光だけで…。一体どんな術なんだ…?
  なんで兄貴が二人も…?なんで兄貴が兄貴を…?

「「さぁ…これからどうする…?朱漣、とか言ったね。
 この男は紛れもなく、君の兄だ。そして…僕の双子の弟だよ」」

「な…」

「「まぁ…信じられないだろうけどね…。だけど…これだけ
 同じ顔なんだし、分かるよね?」」

男は地に伏していた男を片手で軽々と持ち上げた。

「「ほら?全く一緒だろ?そうか…となると…朱漣、君も
 僕の弟になるんだね」」
『……たる…よ…りて…れに…さん…』
『土轟の舞・縛!』

「兄貴!!」

「「へぇ…まだ歯向かうんだ…」」
「黙れ…貴様をこのまま…帰すわけには行かない!!」
「「愚かだねぇ…」」
「止めろ!!」
「「黙ってそこで見ていろ!」」

  さっきの兄貴と同じ状態だった。俺は全く動けず
  得体の知れない力で、その場に突っ伏してしまった。

「「さぁ…見るがいい…終わりと、新たなる始まりを…。
 自然の素たる子供たちよ、我が掌に集まりてその力、我に示めさん…」」
「なっ!?」
『冥無の舞・滅!』

  男が唱えて放った技は確かに【言詩力】だった…
  そう思った瞬間、目の前が真っ白になった…。
  何が起きたのか全く理解が出来なかった…ただ…
  目の前の景色が元に戻ったときには兄貴の姿はなかった。

「あに…き?」
「「君の兄は、もう還元されたよ。この…母なる大地に」」

  男が何を言っているのか分からなかった。ぶっ飛ばして
  問いただそうと思ってるのに身体が全く言う事をきかなかった…。

「「短い一生だったろうけど…まぁいいんじゃない?それなりに
 楽しめた人生だったはずだろうし」」
「短い…一生…だった…?」
「「だから消えたんだよ。万物に許された共通の終焉。そう…死だ」」
「兄貴が…死んだ…?兄貴を…コロシタノカ?」
「「ああ、たった今。君が無力にもそこに這いつくばっている瞬間に、ね」」


「オマエハ…コロス…」


「「その紅い眼。やっぱり君、『眼』の持ち主だったんだね」」
「お前には…死以上の苦痛を味あわせてやる!!」
「「いいのかい?『眼』に覚醒したばかりでそんなに…」」
「黙れぇぇぇ!!!」
「「威勢のいいことで」」
「なんで…なんで兄貴を殺したぁっっ!!」

少年は男に全力で向かっていった。無数の拳を繰り出すが
男には難なくかわされ、全く相手にされていなかった。
ただ一撃だけ、拳が男の頬をかすめ、微かに血が流れた。

「「あんまり調子に乗らないでくれる…?」」
 
さっきまでとは比べモノにならないくらいの重圧が、少年を襲った。

「「君との戦いは実に楽しいものになりそうだけど
 今日は退散しよう。目的は達成できたからね」」
「目的…?」
「「ああ。まぁまた会うことがあるだろう。続きは
 その時にしよう…。もう1人の…弟よ」」

  そう言うと、男は空間のねじれと共に、姿が見えなくなった。

『そうそう、僕の名は黒桜、ゼギウス・ガル・黒桜。
 これからはもう1人の君の兄となる男だよ』

  男の声が遠ざかるとともに、俺の意識も薄れていった。
  終わりと始まりの、混沌の中で…。
2005/05/28/Sat 04:37:03   陽炎の海/CM:0/TB:0/



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