漆黒の斬撃

東京砂漠に生きる役者が、主に物語を書き綴るブログです。つたない文章ですが、お付き合い頂けたら幸いです。

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  序章
人間が平等なのは、生まれたその瞬間だけ。

生まれたあとは平等じゃない。生まれた場所、親、そして…時代。

生まれた瞬間は、何も無い。自分自身の存在だけが全て。

でも、生まれてしまえば、それはもう平等とは言えない。

父親が居ないかもしれない。金持ちかもしれない。

兄弟が居るかもしれない。国が戦中かもしれない。

僕は、両親も居るし、戦争もしていないし、貧しくもない。

ただ…生まれた瞬間から、13年しか生きられないコトが

運命付けられているだけ。それが僕の人生の始まり…。
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2005/07/08/Fri 23:35:47   混沌、そして終焉なる産声/CM:0/TB:0/



  【混沌、そして終焉なる産声・一歌】『明日に出会う水面』
照り付ける太陽の光に、水面が揺れている。水面に照り付けられた
太陽の光は乱反射を起こして、校舎の壁に不思議な模様を
浮かび上がらせていた。まるで異世界に紛れ込んだような…
そんな気分にさせてくれた。

母さんが話してくれた。この太陽の光だけは、昔から変わらないって。
母さんもこういう光景見たのかな。僕は木陰に座りながら、しばらく
壁の異世界に見入っていた。ゆらゆらと揺れる光。地球の外から
送られてきた光で作られた、僕が住んでる世界とは別の世界…。
この光に触れたら…この世界から抜け出せるかな…。そう思った刹那、
壁の異世界が消えた。僕は後ろを振り返る。1人の女の子が泳ぎ始めていた。
真っ白い水着に身を包んで、キレイなクロールで水面を揺らしていた。
ゴーグルで顔は全然分からないけど、ここに居る以上、この学校の
子なのかな。背も高そうだし、僕と同じ学年かもしれない。と言っても、
六年生になってから学校に来る友達は数えるほどしか居ないけど…。

「ねぇ?キミ。」
「!!」

僕はびっくりした。いきなり見知らぬ女の子に声をかけられてしまった。
怖い女の子だったらどうしよう…。いきなりお金とか取られたら…

「ねぇってば。」
「…なに…?」

彼女はプールサイドから僕に話しかけてきた。逆光で相変わらず顔が
よく分からないけど、スイムキャップをはずした彼女は長い黒髪だった。
段々とフェンス越しに、白い水着が僕の目の前に近づいてきた。

「キミ、ここの学校の子?」
「そう…だけど…」
「何年生?」
「一応六年生…だけど…」
「そっか、よかった。私、二学期から転入予定の天野百合。キミは?」
「土原…十流」
「トオル?漢字は?私は花のユリ」
「漢数字の十に流れる…」
「そっかぁ。じゃあ十流が10人居たら私になれるね」
「え?」
「それもとも私が10分の1になればいいのかな」

そう言った彼女は僕に背を向けて、スイムキャップの中に髪をしまい、
また水の中へ消えて行った。僕はなんだか恥ずかしくなって、また
壁の異世界を眺めた。彼女も六年生なんだろうか…。彼女の質問に
答えてばかりで僕は何も答えられなかった。元々人と話しをするのは
得意じゃないけど、なんだか彼女の質問には素直に答えられた。きっと
それは、さっきの壁の異世界が続いてて、僕が僕じゃなかったんだ…。
ここを離れたら、またきっと僕は僕の世界に還る…。そう思いながら、
壁の異世界を見つめていた。そしてもう一度プールを見ると彼女が
笑顔で手を振っていた。僕の10分の1の彼女と、彼女の10倍の僕。

二人の出会いはここから始まった。
2005/08/26/Fri 05:51:41   混沌、そして終焉なる産声/CM:0/TB:0/



  【混沌、そして終焉なる産声・二歌】『忘れられない笑顔』
「十流?風邪引いちゃうよ」

気が付くと僕は眠っていた。あの異世界に魅せられて眠りに
落ちていたみたいだ。目の前にはさっきまで水着姿だった彼女が
セーラー服姿で立っていた。

「え?ああ…僕寝ちゃったんだ…。」
「私が気が付いてよかったね。」

そう言って彼女は髪をかきあげながら笑った。さっきは水に濡れて
よく分からなかったけど、やっぱり彼女の髪は長く、背骨の
真ん中くらいまでありそうだった。胸元の赤いスカーフが
僕の顔に触れた。どうしてこの子はこんなに笑えるんだろう…。
来年の今頃はもしかしたらもうこんな事出来るかどうか
分からないのに…。僕は…もうずっと笑っていない。
コノセカイガキライダカラ…。

「ねぇ…」
「なに?」
「どうして…セーラー服なの?」
「ああ、これ?へへ。一足早くお母さんに買ってもらったんだ♪」
「どうして?」
「だって、来年これが着れるかどうか分からないでしょ?」
「……」
「だから一度着てみたかったんだ☆ずっと、憧れてたから…」

その瞬間、さっきまでずっと笑っていた彼女が、初めて物悲しい
顔をした。そっか…。やっぱり…彼女も怖いんだ…。無理に
明るく振舞ってるだけなんだ。

「私も一ついい?」
「え?何?」
「私は『ねぇ』じゃなくて『百合』だからね!」
「え…でも今日いきなり…」
「ハイ、次名前で呼ばなかったら家に帰さないからね?」
「ええ…なにそれ…。」
「5、4…」
「ちょ!なんでカウントダウンしてるの!?」
「3…」
「百合!………ちゃん…」
「百合でいいってば」
「……百合…」
「はいよく出来ましたぁ☆」
「百合って…なんか変だね…」
「プールに入らないで、木陰でボーとしてる十流だって十分変だと思うけど?」
「それは…」
「お互い変同士だね」
「だからって僕と百合を一緒にしないでよ」
「男だったら固い事言わないの♪」
「なんか僕、無茶苦茶理不尽な事言われてる気がする」
「気のせい気のせい」

僕と彼女の、微かな笑い声が、夏の声に混じって響き渡った。
彼女は飛びきりの笑顔で僕に微笑んでくれた。そのときの僕も、
きっと、笑顔だった思う。久しぶりに笑った気がした。

人は色々な事を忘れるけど、ずっと笑っていなくても笑い方を
忘れたりはしないんだって、百合は気付せてくれた。
そんな彼女と一緒に笑ったこの日を、僕は忘れられずにいた……。


どうして僕は生まれてきたの?なんの為に生きてるの?
なぜ百合と出会わせたの?どうして僕に笑顔を思い出させたの?
もしこの世界に神様が居るなら、僕のたった一つの願いを
叶えて欲しい。たった一度の、叶わない願いを…。
そんな思いをするようになったのは、もっとずっと後の事だった。


僕は翌日もなんとなく学校に行った。約束なんてしてないのに。
僕はまた、あの異世界に行きたかったのかもしれない。でも
プールサイドに百合を見たとき、微かに口元が笑った自分に
気が付いた。そんな僕を見て、百合は満面の笑みで呟いた。

「おかえり」

2005/09/06/Tue 02:50:27   混沌、そして終焉なる産声/CM:0/TB:0/



  【混沌、そして終焉なる産声・三歌】『刻まれる記憶』
僕は無意識にそう答えた。なんだかそう答えるのが普通だと
思ったから。よくよく考えて、学校で会ったのに
「おかえり」と「ただいま」は変だと思ったけど、でも
あの瞬間はそんなこと少しも思わなくて、それが普通だって感じた。


僕の父さんは、電子機器メーカーに勤める普通のサラリーマン。
母さんとは社内結婚。父さんの影響で小さいときから電子機器に
触れて育った。程度によるけど、壊れかけたテレビや電子レンジを
直すくらいなら出来る。パソコンなんて、絵本代わりによく触ってた。
だから自分の将来について知ったのも、他の子どもより早かったと思う。

『先天性死春期疾患』 通称?ZERO?

僕が、僕達が生まれながらに抱えている最低最悪の時限爆弾。
いつの頃からか全世界で突発的に、そして加速度的に患者が
増えて、今じゃほとんどの地域に蔓延してる発症率100%の病気。


「百合って、もしかしてその服で登校するつもり?」
「え?まさか。学校が始まったら着ないよ?」
「そっか…」
「なになに??もしかして十流って制服フェチ?」
「なっ!!ち、違うよ!!!」
「顔真っ赤にして、隠さなくてもいいんでしゅよ??」

そう言いながら、百合はスカートの裾を両指でつまみ、闘牛士の
ように僕の目の前でヒラヒラさせて裾を上げていった。段々と
見えてくる白い足に、言葉とは裏腹に僕は目を背けられないでいた。

「な?んね!残念でしたぁー☆ちゃんと水着着てるから♪」
「だ、誰も期待なんてしてないよ!大体百合が勝手に…」
「男の子はガヤガヤ言わないのっ」

昨日初めて出会った女の子なのに、もうずっと前からの
友達のような、家族のような、そんな感覚を百合に感じていた。

「十流はさ、こういうの無いの?」
「こういうの?どういうこと?」
「私のこのセーラー服みたいな」
「それは、例えば夢とか叶えたいこと…とか?」
「うん、そうだね」
「無くは…ないけど…」
「ZEROの…せい?」

僕が笑顔を忘れていた理由…百合が、来年に
着れるかどうか分からないと言ってセーラー服を
着た理由。全ての元凶はZEROにある。
二人で話しながら、プールサイドに座り込んだ。

「だってさ…来年になれば」
「死んじゃうかもしれないから?」
「……。友達だって…もうほとんど学校には来てないし…」
「でもさ、発症したとしても致死率は100%じゃないんだし」
「それはそうだけど…」


ZEROは、13歳に達すると【生】か【死】を選ぶ。
この恐ろしい奇病に…ZEROという名の死神に命を
奪われる確率は90%以上。まだ、なんの解決方法も
見つかってない。僕らは、ただ迫り来る【死】の恐怖と
戦うだけ。セーラー服を着たり、学校に来なくなったり。
そして僕は、生きる目的を失って、笑わなくなった。


「百合ってさ、泳ぐの好きなの?」
「うん。私、前世は絶対魚だよ♪」
「はは。そうかも」
「このままずっと泳いでいたいって思うもん」
「百合は赤ちゃんなんだろうね」
「え?それどういう意味ぃ?」
「知らない?羊水っていう液体」
「羊水?あ、赤ちゃんがお腹の中に居るときの?」
「そう」
「なるほどね。そういう意味かぁ?」
「疑似体験ってやつかな?」
「じゃ、私また赤ちゃんになろっかな」
「え?わっ!」

そう言って百合は、おもむろにセーラー服を脱ぎ始めた。
いくら下に水着を着てると分かってても、女の子の
着替えを見てるみたいでものすごく照れくさかった。

百合は制服を綺麗にたたんでプールに飛び込んだ。
あまりに勢いよく飛び込んだから、僕にも水しぶきが
かかって思わず声を上げた。水面が大きく揺れて
壁の異世界は今日もまた、グニャリと姿を変えた。


母さんが子どもの頃、夏休みには宿題がいっぱいあったらしい。
でも、僕には全くピンとこない。そんなにいっぱい宿題があったら
こんな、学校のプールで遊んだりなんて事、出来てなかったと思う。
そんな今の学校には、僕と百合しかいない。誰もいない教室は
なんだか何も入っていないおもちゃ箱みたいに、とっても
寂しそうだった。二学期が始まったら、おもちゃ箱のおもちゃは
どうなってるんだろ。僕は姿を取り戻し始めた異世界を眺めながら
百合が水をかきわける音を聞いた。一週間前よりセミの声が
段々と減ってきて、陽射しも少しだけ柔らかくなってきたような気がする。
空には月が白色に輝いて、夏が終わろうとしていた。
2005/09/27/Tue 23:51:15   混沌、そして終焉なる産声/CM:0/TB:0/



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