漆黒の斬撃

東京砂漠に生きる役者が、主に物語を書き綴るブログです。つたない文章ですが、お付き合い頂けたら幸いです。

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  【混沌、そして終焉なる産声・二歌】『忘れられない笑顔』
「十流?風邪引いちゃうよ」

気が付くと僕は眠っていた。あの異世界に魅せられて眠りに
落ちていたみたいだ。目の前にはさっきまで水着姿だった彼女が
セーラー服姿で立っていた。

「え?ああ…僕寝ちゃったんだ…。」
「私が気が付いてよかったね。」

そう言って彼女は髪をかきあげながら笑った。さっきは水に濡れて
よく分からなかったけど、やっぱり彼女の髪は長く、背骨の
真ん中くらいまでありそうだった。胸元の赤いスカーフが
僕の顔に触れた。どうしてこの子はこんなに笑えるんだろう…。
来年の今頃はもしかしたらもうこんな事出来るかどうか
分からないのに…。僕は…もうずっと笑っていない。
コノセカイガキライダカラ…。

「ねぇ…」
「なに?」
「どうして…セーラー服なの?」
「ああ、これ?へへ。一足早くお母さんに買ってもらったんだ♪」
「どうして?」
「だって、来年これが着れるかどうか分からないでしょ?」
「……」
「だから一度着てみたかったんだ☆ずっと、憧れてたから…」

その瞬間、さっきまでずっと笑っていた彼女が、初めて物悲しい
顔をした。そっか…。やっぱり…彼女も怖いんだ…。無理に
明るく振舞ってるだけなんだ。

「私も一ついい?」
「え?何?」
「私は『ねぇ』じゃなくて『百合』だからね!」
「え…でも今日いきなり…」
「ハイ、次名前で呼ばなかったら家に帰さないからね?」
「ええ…なにそれ…。」
「5、4…」
「ちょ!なんでカウントダウンしてるの!?」
「3…」
「百合!………ちゃん…」
「百合でいいってば」
「……百合…」
「はいよく出来ましたぁ☆」
「百合って…なんか変だね…」
「プールに入らないで、木陰でボーとしてる十流だって十分変だと思うけど?」
「それは…」
「お互い変同士だね」
「だからって僕と百合を一緒にしないでよ」
「男だったら固い事言わないの♪」
「なんか僕、無茶苦茶理不尽な事言われてる気がする」
「気のせい気のせい」

僕と彼女の、微かな笑い声が、夏の声に混じって響き渡った。
彼女は飛びきりの笑顔で僕に微笑んでくれた。そのときの僕も、
きっと、笑顔だった思う。久しぶりに笑った気がした。

人は色々な事を忘れるけど、ずっと笑っていなくても笑い方を
忘れたりはしないんだって、百合は気付せてくれた。
そんな彼女と一緒に笑ったこの日を、僕は忘れられずにいた……。


どうして僕は生まれてきたの?なんの為に生きてるの?
なぜ百合と出会わせたの?どうして僕に笑顔を思い出させたの?
もしこの世界に神様が居るなら、僕のたった一つの願いを
叶えて欲しい。たった一度の、叶わない願いを…。
そんな思いをするようになったのは、もっとずっと後の事だった。


僕は翌日もなんとなく学校に行った。約束なんてしてないのに。
僕はまた、あの異世界に行きたかったのかもしれない。でも
プールサイドに百合を見たとき、微かに口元が笑った自分に
気が付いた。そんな僕を見て、百合は満面の笑みで呟いた。

「おかえり」
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2005/09/06/Tue 02:50:27   混沌、そして終焉なる産声/CM:0/TB:0/



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 内緒です♪

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