漆黒の斬撃

東京砂漠に生きる役者が、主に物語を書き綴るブログです。つたない文章ですが、お付き合い頂けたら幸いです。

  スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--/--/--/-- --:--:--   スポンサー広告/CM(-)/TB(-)/



  【混沌、そして終焉なる産声・三歌】『刻まれる記憶』
僕は無意識にそう答えた。なんだかそう答えるのが普通だと
思ったから。よくよく考えて、学校で会ったのに
「おかえり」と「ただいま」は変だと思ったけど、でも
あの瞬間はそんなこと少しも思わなくて、それが普通だって感じた。


僕の父さんは、電子機器メーカーに勤める普通のサラリーマン。
母さんとは社内結婚。父さんの影響で小さいときから電子機器に
触れて育った。程度によるけど、壊れかけたテレビや電子レンジを
直すくらいなら出来る。パソコンなんて、絵本代わりによく触ってた。
だから自分の将来について知ったのも、他の子どもより早かったと思う。

『先天性死春期疾患』 通称?ZERO?

僕が、僕達が生まれながらに抱えている最低最悪の時限爆弾。
いつの頃からか全世界で突発的に、そして加速度的に患者が
増えて、今じゃほとんどの地域に蔓延してる発症率100%の病気。


「百合って、もしかしてその服で登校するつもり?」
「え?まさか。学校が始まったら着ないよ?」
「そっか…」
「なになに??もしかして十流って制服フェチ?」
「なっ!!ち、違うよ!!!」
「顔真っ赤にして、隠さなくてもいいんでしゅよ??」

そう言いながら、百合はスカートの裾を両指でつまみ、闘牛士の
ように僕の目の前でヒラヒラさせて裾を上げていった。段々と
見えてくる白い足に、言葉とは裏腹に僕は目を背けられないでいた。

「な?んね!残念でしたぁー☆ちゃんと水着着てるから♪」
「だ、誰も期待なんてしてないよ!大体百合が勝手に…」
「男の子はガヤガヤ言わないのっ」

昨日初めて出会った女の子なのに、もうずっと前からの
友達のような、家族のような、そんな感覚を百合に感じていた。

「十流はさ、こういうの無いの?」
「こういうの?どういうこと?」
「私のこのセーラー服みたいな」
「それは、例えば夢とか叶えたいこと…とか?」
「うん、そうだね」
「無くは…ないけど…」
「ZEROの…せい?」

僕が笑顔を忘れていた理由…百合が、来年に
着れるかどうか分からないと言ってセーラー服を
着た理由。全ての元凶はZEROにある。
二人で話しながら、プールサイドに座り込んだ。

「だってさ…来年になれば」
「死んじゃうかもしれないから?」
「……。友達だって…もうほとんど学校には来てないし…」
「でもさ、発症したとしても致死率は100%じゃないんだし」
「それはそうだけど…」


ZEROは、13歳に達すると【生】か【死】を選ぶ。
この恐ろしい奇病に…ZEROという名の死神に命を
奪われる確率は90%以上。まだ、なんの解決方法も
見つかってない。僕らは、ただ迫り来る【死】の恐怖と
戦うだけ。セーラー服を着たり、学校に来なくなったり。
そして僕は、生きる目的を失って、笑わなくなった。


「百合ってさ、泳ぐの好きなの?」
「うん。私、前世は絶対魚だよ♪」
「はは。そうかも」
「このままずっと泳いでいたいって思うもん」
「百合は赤ちゃんなんだろうね」
「え?それどういう意味ぃ?」
「知らない?羊水っていう液体」
「羊水?あ、赤ちゃんがお腹の中に居るときの?」
「そう」
「なるほどね。そういう意味かぁ?」
「疑似体験ってやつかな?」
「じゃ、私また赤ちゃんになろっかな」
「え?わっ!」

そう言って百合は、おもむろにセーラー服を脱ぎ始めた。
いくら下に水着を着てると分かってても、女の子の
着替えを見てるみたいでものすごく照れくさかった。

百合は制服を綺麗にたたんでプールに飛び込んだ。
あまりに勢いよく飛び込んだから、僕にも水しぶきが
かかって思わず声を上げた。水面が大きく揺れて
壁の異世界は今日もまた、グニャリと姿を変えた。


母さんが子どもの頃、夏休みには宿題がいっぱいあったらしい。
でも、僕には全くピンとこない。そんなにいっぱい宿題があったら
こんな、学校のプールで遊んだりなんて事、出来てなかったと思う。
そんな今の学校には、僕と百合しかいない。誰もいない教室は
なんだか何も入っていないおもちゃ箱みたいに、とっても
寂しそうだった。二学期が始まったら、おもちゃ箱のおもちゃは
どうなってるんだろ。僕は姿を取り戻し始めた異世界を眺めながら
百合が水をかきわける音を聞いた。一週間前よりセミの声が
段々と減ってきて、陽射しも少しだけ柔らかくなってきたような気がする。
空には月が白色に輝いて、夏が終わろうとしていた。
スポンサーサイト

2005/09/27/Tue 23:51:15   混沌、そして終焉なる産声/CM:0/TB:0/



new : 【混沌、そして終焉なる産声・二歌】『忘れられない笑顔』
MAIN
old : ?いち?
COMMENT
COMMENT POST
/
/
/
/



 
 内緒です♪

TRACK BACK
  この記事のトラックバックURL:
   http://galaxyblack.blog8.fc2.com/tb.php/13-7ad96b42
MAIN
copyright © 2006 漆黒の斬撃. All Rights Reserved.
Template Title : 月の雫 -蒼月-  Ver1.1
by TAE-3rd☆テンプレート工房
  
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。