漆黒の斬撃

東京砂漠に生きる役者が、主に物語を書き綴るブログです。つたない文章ですが、お付き合い頂けたら幸いです。

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  後悔という名の胎動。
「てっちゃんの…バカ……」

靴を履く手を一瞬止めて、携帯を
下駄箱の上に置いた。私の覚悟。
触れたドアノブの冷たさに少し驚き
風で少し重い扉を開けた。

階段を足早に駆け下り、近くの公園まで来て
重い足取りと乱れた呼吸を整えながら、
ようやく落ち着きを取り戻した。

「なにやってるんだろ…私…」

自分でも驚くほど衝動的に部屋を飛び出した。
さすがの私も、我慢の限界だったらしい。
だって、今日は…あ、もう…今日が終わちゃった。
公園の時計を見てから、改めて自分の腕時計を見た。

彼、栗原哲平とは、付き合って一年。そう、ちょうど一年。
五歳年上の彼。私はまだまだ子ども。もうすぐ
就職活動が控えてる、ただの、平凡な大学生。
彼は、大手旅行代理店に勤める、敏腕プランナー。

出会ったきっかけは、高校ニ年生の修学旅行。
修学旅行の時に見た彼(の仕事振り)に惹かれて
偶然の再会を期待しながら、親友の由貴と
一緒に企画した卒業旅行をお願いする為に
彼の職場へ押しかけた。

ホストクラブよろしく、若気の至りというか
店に入っててっちゃんを見かけるなり
自分でも驚くくらいの大声で名指しして
隣に居た由貴に後でいっぱいお説教されたっけ。

クスクスという笑い声が聞こえるくらいに
バカにしたような女性社員の視線など
おかまいなしに、私はてっちゃんに
卒業旅行の計画をお願いした。

てっちゃんは、熱心に私たちの話しを聞き
最高のプランを立ててくれた。その後、何回か
お店に立ち寄って最終的な打ち合わせを終えて
お店を出ようとしたとき、私を呼びとめて


『旅行が終わったら今度は遊園地、ってのはどうかな?』


そう言うと、てっちゃんは私に自分の名刺をくれた。
手書きで書かれた、私用の携帯番号の載った名刺を。
意外と積極的な人だなぁってその時は思ったけど
実際にプライベートで会うと、かなり奥手な人だった。

卒業旅行を終え、大学が始まるまでの春休み中に
てっちゃんの誘い通り、遊園地に出かけた。
二人で入場門をくぐって、ジェットコースター乗って
ソフトクリーム食べて、観覧車に乗って、やっと手を繋いで…

一年半くらい友達として付き合って、一年前の今日…
この公園で、私は【お客様】から【お友達】を経て
晴れて【彼女】になった。

由貴や他の友達にも色々と言われた。
五歳も年上の人とうまくいくわけないって。
そんなこと、由貴に言われなくても分かってた。
だけど、好きになっちゃったんだもん……

私は、その歳の差を埋めよう努力した。
だけど、そんな私を気遣っててっちゃんに
優しくされるとそれはそれでなんだか辛かった。

てっちゃんの負担になるのは嫌だった。
てっちゃんは不器用だからすぐに顔にでちゃうし。
その不器用な優しさがイイトコロでもあるんだけど。

私が初めててっちゃんの家にご飯を作りに
行ったとき、私はまだ料理に慣れてなくて
出来は最悪だったのに


『料理はさ、やっぱ愛情こもってると違うね!』


そう言って、ちょっと涙目で笑いながら全部食べてくれた。
あんなに…いっぱい怒って家を飛び出したのに…
やっぱり好きなんだなぁ…てっちゃんのコト…。

でも今日はもう戻らない…。その為に、携帯も
置いてきたし…もしてっちゃんから電話がかかってきたら
絶対に帰っちゃいそうだし…。携帯…気が付く…かな…

湿った強い風が、心だけではなく身体も冷やす。
足元の紅葉を眺めていると、頬に水滴が流れた。
次第に水滴は幾粒も落ちて、地面を濡らし始める。
袖で頬を拭い、私は公園の入り口へ歩いた。

今夜は由貴の家に行って…もう一回、ちゃんと泣こう…
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2006/11/10/Fri 23:16:26   十六夜~月下天真~/CM:0/TB:0/



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