漆黒の斬撃

東京砂漠に生きる役者が、主に物語を書き綴るブログです。つたない文章ですが、お付き合い頂けたら幸いです。

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  深淵に浮かぶ満月
「そっかぁ…哲平さん、最近忙しいんだ?」
「うん。時期が時期だし、しょうがないけどね」
「でも、それで茜に冷たいって、ちょっと酷いよね~」

Tシャツ姿の人も減り、長袖の人が多くなってきた
人混みを見ながら、カフェで由貴に愚痴をこぼしてた。

大学のすぐそばにある、お気に入りのカフェ。何かあると
由貴を誘って、このカフェテラスで陽が暮れるまで色々と
語り合うのが、大学に入ってからの恒例行事だった。
今日は長くなると思って、コーヒーだけじゃなくて
ケーキセットも頼んだ。今夜は、ケーキも用意しよう。

由貴に話を聞いてもらってから、私は冷蔵庫の中身の
確認と部屋の掃除をする為に、てっちゃんの部屋に行った。

「さてと、買い物に行きますか♪」

部屋の片付けを済ませ、食材の買い出しにスーパーに
向かった。てっちゃんの気持ちを少しでも盛り上げる為に、
今日の誕生日はなんとしても成功させたかった。

それは、私のエゴなのかもしれないけど…

アパートの階段を下りると風が少し温かった。
天気予報で言ってた通り台風が近づいてるみたい。
珍しく天気予報が当たりそうだなぁ…と思いながら
私は早足で歩き始めた。

「あ~あ。やっぱり髪縛ってくればよかったなぁ」

強くなってきた風に髪を弄ばれていると、私は
不思議な光景を目にした。紅く色付く樹の向こうに
私自身を見かけた。風にセミロングの髪をなびかせ
グレーのカーディガンを羽織った…今日の私と同じ格好の。

一瞬、私は何が起こったのか分からなかった。
見間違いかと思ったけど…アレは私自身だった。
何の根拠も無いけど、漠然とそんな気がした。

突風でスカートの裾に気をとられてる間に
彼女を見失った。辺りを探したけど、もうどこにも
彼女の姿は見え無かった。そんな…私なワケ無いよね。
やっぱり就活で疲れてるんだ。

そう…疲れてたんだ…。てっちゃんが仕事で
疲れてる事は分かってるんだし、私が我儘言って
余計に疲れさせてちゃダメだよね。こんな事で
音を上げてたら、これから先だってやっていけないし。
今夜は、てっちゃんに少しでも楽しい時間を
過ごしてもらおう。いっぱい、いっぱい……………








気が付くと、私の視界には白い天井が見えた。
見覚えの無い天井。横で人の声がする。
天井を眺めながら、段々と意識が覚めてくる。
人の声に意識を向けようとすると、白衣を着た
白髪の老人が、私の眼球を照らした。
ここは…病院…?私…助かったの…?

「冴島さん。娘さん、気が付きましたよ」

医者がそう言うと、一人の女性が泣きながら
私に覆い被さってきた。娘さんってことは母さん…?
意識はあるけど、身体がうまく動かせなかった。

「よかった…病院から連絡もらって…びっくりしたんだから…」
「じゃあ冴島さん、まだ無茶をさせちゃいけませんよ」
「はい。ありがとうございました」
「母…さん…?」
「どうしたの美月?」

そう言って私の顔を覗き込んだのは、母さんじゃなかった。
私の知らない、女の人だった。その人は私の事を
【美月】と呼んだ…。何がなんだか分からなくなって
記憶と意識を整理しようとしたけど、そのまままた
奥底へ沈みそうになり瞼を閉じた。

その直前、窓際から見えた乳白色の満月が
まるで空にポッカリ開いた抜け穴のように見えた。
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2006/12/10/Sun 01:30:43   十六夜~月下天真~/CM:0/TB:0/



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 内緒です♪

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