漆黒の斬撃

東京砂漠に生きる役者が、主に物語を書き綴るブログです。つたない文章ですが、お付き合い頂けたら幸いです。

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  憎む血。
血の匂いが…したような気がした…。
気のせいか。ここのところ稽古と戦が続いて
きっと疲れが溜まっているのだろう…

あれから五年。決して忘れる事の出来ぬ一夜。
何もかもが変わった日。奴が言うように、力も
付けた。体躯も整った。この五年で、奴の
行動も、それとなく読めるようになった。だが…

「信澄様」
「なんだ?」
「お館様がお呼びです」
「こんな早朝だが、どうせ火急ではないだろう?」
「ええ、私もそう思います」
「いつもの戯れ、か」
「ですが…」
「中身は私より幼き方だからな。些細な事で激昂しかねん」
「これで私の首も守られます」
「仁吉、殿にはすぐに行くと伝えてくれ」
「は。では」

寝起きの悪い夢を見て、ひどい寝汗をかいていた。
仁吉に呼ばれ起き上がると、刺すような冷気が
身体を覆った。洛陽が早くなり始め、いつしか
朝には氷が張るような季節になっていた。早いものだ。
着替えを済ませ、廊下を急ぐと彼を見つけた。

「明智殿」
「おお、信澄殿。そなたも信長様に?」
「でなければこんな早朝に部屋は出ませんよ」
「確かに。何用かは…」
「知る由もありません」
「だろうな…。しかし、なんだと思う?」
「それが分かれば、私は易者にでもなりましょう」
「うむ、それもいいかもしれんな。そなたに剣は似合わん」
「私が刀を捨てれば…首が一つ落ちましょう…」
「いや…済まぬ…」
「いえ…」

俺たち兄妹が、織田の縁者だと知る者は、父の側近だった
柴田殿を含め、前田殿、木之下殿、明智殿、そしてお農様。
それ以外の者は「殿の気まぐれ」で拾われた兄妹だと思っている。

実際そう思われていた方が、城内では過ごしやすい。
父上は、謀反人の烙印を押されている。その嫡男が
生きていると知れば、例え奴が許しても、家臣の
誰かが俺たちを生かしてはいないだろう。それは
この五年でよく分かった。奴はうつけだ、うつけだと
言われているが、その行動は全て計算されているものだ。
並の者には理解出来なくとも、俺にはそれが、分かる。
吐き気がするほど憎いが、織田の血の成せる業なのか…

「おお!お二人とも、こんな早うから済まんな」
「柴田殿が謝る事ではありませんぞ」
「それで、殿はどちらに?」
「わしが知りたいところじゃ。何処にも見当たらん」
「全くあのお方は…」
「ま、そのうち出てくるじゃろうて。がはははっ」

笑っている柴田殿の目が動いていないのを
俺は見逃さなかった。勇猛な人だが、この人は
最後まで父を守ってはくれなかった…。

三人で呆れていると、遠くから奴の声が聞こえた。
陽が昇りはじめ、凍った地面がパキッと音を立てた。
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2006/12/19/Tue 01:54:33   血だまりの華/CM:0/TB:0/



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