漆黒の斬撃

東京砂漠に生きる役者が、主に物語を書き綴るブログです。つたない文章ですが、お付き合い頂けたら幸いです。

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  【陽炎の海・第四輪】『覚醒』
「なんだよ…これ…」
「父さん…?母さん…?」

少年たちは驚愕した。自分たちの村が、家が、まるで
巨大なモンスターに踏み潰されたように無くなっていた。
いや、破壊されていた。食べられたような、えぐられたような
とても形容しがたい惨状だった。ところどころに火も上がっていた。
全ての物に見る影が何もなくなっていた。ほんの数時間前までは
見慣れた風景だった場所が、全く別の異世界にでも来たような風景だった。

「ねぇ…朱漣?ここ…私たちの村だよね…?父さんは?
 母さんは?村のみんなは…?」
「蒼華…現実から逃げるな…戦士なら…自分の目を信じろ…」
「だってこんな現実…」
「俺だって信じたくねぇよ!!!!」
「……」
「とりあえず、お前の風で急いで村中を回って
 誰か生存者が居ないか調べろ」
「……」
「蒼華…悲しむ前に、今自分たちに出来る事をやろう。
 な?もしかしたらここは俺たちの村じゃなくて…
 何かの罠でみんなどこかに連れて行かれてるだけかもしれない。
 まずは現状を把握しよう。悲しむのは…それからだ」
「……」

少年は少女をそっと抱きしめた。気丈そうに見えた少女は
小刻みに身体を震えさせていた。少年は優しく少女を包んだ。

「少しは…落ち着いたか?」
「うん…」
「翔べるな?」
「うん…」
「頼む。俺も何か手がかりがないか調べてるみる。
 何かあったら【気笛】を鳴らしてくれ」
「朱漣…」
「ん?」
「朱漣まで…消えないでね…?」
「絶対に手がかりを見つけよう…」

小さな頷きとともに少女は翔んだ。

  俺もなにか手がかりを見つけよう。だけど…蒼華には
  ああ言ったものの、俺は半ば諦めていた…冷静で
  いられたのは心のどこかで無駄だと悟っていたから
  なのかもしれない。戦士としての直感…。きっと…
  ガーフォルンに攻め込まれたんだ…。さっきの声…
  あれはきっとここを襲った奴なんだろう…。
  兄貴の式鴉が消えたのも…式鴉で兄貴が逃げろって
  言ったのもきっと村が襲われたから…。それでも
  納得がいかないのは【伝心術】だ。どうして兄貴の…


『眼の持ち主よ…』


  まただ!!一体どうして兄貴の【伝心術】を!?

「お前は誰だ!?どうして兄貴の術を!?眼の持ち主ってなんだ!?
 この村を襲ったのもお前なのか!?」

『だったら…どうするんだい…?』

「決まってる…お前を…ブチのめす!!!!!」

『ふぅん…君のその気概に敬意を表して…少し遊んであげるよ…』

刹那、空間が悲鳴をあげるように空気がねじ切れたような
感覚が少年を襲った。そして、少年は大人三人を
担いでいるような、すさまじい重圧を感じた。少年の
眼前に、二人の男が現れた。1人は地に伏し、もう1人は
その男を見下ろすかのようにまるですべての支配者のように
威風堂々と、獲物を射抜くような眼光で少年を見据えた。
その二人は、どちらも少年にとって見慣れた顔だった。
  
「兄貴…」
「「ふ…君の言う兄とは…コレの事かな?」」
「がはっ!」

地に付していた男が、頭上の男に蹴圧され、鮮血を流した。

「「眼の持ち主よ…先程の勢いはどうしたんだい…?」」
「しゅ…れんか…?やめろ…弟に…手を…」
「「お前は…黙ってろ」」
「ぐっ…ごふ!」

  立っていた男が地に兄貴を押しつぶした…。手も足も
  触れていないのに…眼光だけで…。一体どんな術なんだ…?
  なんで兄貴が二人も…?なんで兄貴が兄貴を…?

「「さぁ…これからどうする…?朱漣、とか言ったね。
 この男は紛れもなく、君の兄だ。そして…僕の双子の弟だよ」」

「な…」

「「まぁ…信じられないだろうけどね…。だけど…これだけ
 同じ顔なんだし、分かるよね?」」

男は地に伏していた男を片手で軽々と持ち上げた。

「「ほら?全く一緒だろ?そうか…となると…朱漣、君も
 僕の弟になるんだね」」
『……たる…よ…りて…れに…さん…』
『土轟の舞・縛!』

「兄貴!!」

「「へぇ…まだ歯向かうんだ…」」
「黙れ…貴様をこのまま…帰すわけには行かない!!」
「「愚かだねぇ…」」
「止めろ!!」
「「黙ってそこで見ていろ!」」

  さっきの兄貴と同じ状態だった。俺は全く動けず
  得体の知れない力で、その場に突っ伏してしまった。

「「さぁ…見るがいい…終わりと、新たなる始まりを…。
 自然の素たる子供たちよ、我が掌に集まりてその力、我に示めさん…」」
「なっ!?」
『冥無の舞・滅!』

  男が唱えて放った技は確かに【言詩力】だった…
  そう思った瞬間、目の前が真っ白になった…。
  何が起きたのか全く理解が出来なかった…ただ…
  目の前の景色が元に戻ったときには兄貴の姿はなかった。

「あに…き?」
「「君の兄は、もう還元されたよ。この…母なる大地に」」

  男が何を言っているのか分からなかった。ぶっ飛ばして
  問いただそうと思ってるのに身体が全く言う事をきかなかった…。

「「短い一生だったろうけど…まぁいいんじゃない?それなりに
 楽しめた人生だったはずだろうし」」
「短い…一生…だった…?」
「「だから消えたんだよ。万物に許された共通の終焉。そう…死だ」」
「兄貴が…死んだ…?兄貴を…コロシタノカ?」
「「ああ、たった今。君が無力にもそこに這いつくばっている瞬間に、ね」」


「オマエハ…コロス…」


「「その紅い眼。やっぱり君、『眼』の持ち主だったんだね」」
「お前には…死以上の苦痛を味あわせてやる!!」
「「いいのかい?『眼』に覚醒したばかりでそんなに…」」
「黙れぇぇぇ!!!」
「「威勢のいいことで」」
「なんで…なんで兄貴を殺したぁっっ!!」

少年は男に全力で向かっていった。無数の拳を繰り出すが
男には難なくかわされ、全く相手にされていなかった。
ただ一撃だけ、拳が男の頬をかすめ、微かに血が流れた。

「「あんまり調子に乗らないでくれる…?」」
 
さっきまでとは比べモノにならないくらいの重圧が、少年を襲った。

「「君との戦いは実に楽しいものになりそうだけど
 今日は退散しよう。目的は達成できたからね」」
「目的…?」
「「ああ。まぁまた会うことがあるだろう。続きは
 その時にしよう…。もう1人の…弟よ」」

  そう言うと、男は空間のねじれと共に、姿が見えなくなった。

『そうそう、僕の名は黒桜、ゼギウス・ガル・黒桜。
 これからはもう1人の君の兄となる男だよ』

  男の声が遠ざかるとともに、俺の意識も薄れていった。
  終わりと始まりの、混沌の中で…。
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2005/05/28/Sat 04:37:03   陽炎の海/CM:0/TB:0/



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