漆黒の斬撃

東京砂漠に生きる役者が、主に物語を書き綴るブログです。つたない文章ですが、お付き合い頂けたら幸いです。

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  悪夢の中の鏡。
「なんか…身体が…重いなぁ…」

目を覚ました私は、見覚えのある場所に居た。
ここは子どもの頃に、よく家族でキャンプをした河川敷だった。
土手にはちゃんと芝生が生えていて、ダンボールで滑ったり、
近くにある川で釣りをしたり、バードウォッチングをしたり、
色々な思い出がある場所。

でも、どこかぼやけていた。薄い霧のようなものが
立ち込めているからなのかな。辺りを見渡すと、倒れてる
人影が見えたので、私は急いで駆け寄った。

「もしもし…?」
「ん…う~ん…」
「だ…大丈夫ですか…?」

私は倒れていた彼女を見て、激しく動揺をした。

「あ~、やっときた」
「……」
「なるほどね」
「え…」
「絶対分かる、ってこういう事ですか」

目の前に倒れていた子は、静かに
呟きながら、私の顔をゆっくりと眺めた。
見定めてるような、観察をするような
そんな目で私の周りをグルグルと
回りながら私を見ていた。

私も彼女も、なんの装飾品も付けずに靴も
履かずに、白いノースリーブだけを着ていた。
彼女は私と同じくらい…ううん、全く同じ背丈で
私も彼女と同じ格好で、そして同じ顔をしていた。

「あの…あなた…なんで」
「なんで同じ容姿なのか、って?」
「……」
「それはね…ヒ・ミ・ツ☆」

おどけてみせた彼女の顔は、私と同じ顔のはずなのに
私が見た事も無いような顔で笑っていた。怒りが
失せると同時に、私も冷静さを取り戻した。こんな
ところにどうしているのか、やっぱりなにかおかしい。

「あの、一体何がどうなってて、あなたはどうし…」
「ストーップ」
「?」
「そんなに慌てないでよ。ちゃんと説明するから」

そう言って、彼女は辺りをキョロキョロと見渡すと
ちょうどいい場所を見つけたのか、スカート部分を
押さえこんでそこに座り、私を手招きした。人どろこか
虫や鳥の気配さえも無いのに、不思議と怖くは無かった。

「じゃあまず、ここの説明から。ここはね、三途の川」

彼女は、私の目を見てハッキリと言った。三途の川を
知らない大人でも無いし、信じられる程子どもでもなかった。
2007/01/20/Sat 00:12:17   十六夜~月下天真~/CM:0/TB:0/



  鏡の欠片。
大きな事故だった割に目立った外傷は無かったが
内蔵をやられ、致死量に近い出血をしいた為に
手術は難航しているようだった。

茜の両親に昨夜の事を全て話した。俺はきっと、
ただ苦しみから解放されたかっただけだと思う。
誰かに責められて、楽になりたかった。
だけど、二人は優しく、頷くだけだった。
その優しさが、余計に胸を突いた。

降り続いていた雨もいつの間にか止み、正午も
間近に迫ってきた。由貴ちゃんは泣き疲れ、
半ば憔悴しきっていた。俺は彼女を気遣うと
同時に、この空間に居るのが怖くなっていた。
たまに聞こえる看護士の足音と静寂。

白と黒の空間に光が射し込みはじめても、
空気の重さは一向に変わらなかった。

時計の針が8時を指そうとしていた。ここに
到着してから2時間強。由貴ちゃんに至っては
10時間近く経つ。これで由貴ちゃんにまで
何かあったら、茜に合わせる顔がない。
彼女の疲弊を理由に、一度この場を離れようと思い
茜の両親へ近づいた。

『近寄らないで』

母親の目がそう語っていた…ように見えた。最悪の被害妄想だ…。
二人に承諾を得て、俺は由貴ちゃんを家まで送る為に病室から離れた。
静けさが取り得の様な廊下が、永遠に続くように感じ、二人の
足音が工事現場に鳴り響く轟音のように聞こえた。

二度と、会えないかもしれない…
そんな考えが頭をよぎった俺の心中を察したのか、
ずっと俯いていた由貴ちゃんが

「ありがとうございます」

と、消え入りそうな声で言った。礼を言たいのは俺の方なのに…
例えようのない感情に心を掻き乱され、どうする事も出来ず
自分の拳を無意味に握る事しか出来なかった。

ようやくエレベーターの前に辿り着くと、ボタンを
押そうとした指が震えていた。一呼吸おき、階下へ
行く為のボタンを押した。赤く光るボタンの点滅が、
何かのカウントダウンをしているように思え、陰鬱な
考えを払拭しようと頭を振る。エレベーターの扉が開き
見覚えのある女性が無機質な箱の中に立っていた。

ここに来た時にぶつかった女性だった。服装も違い、衣服などが
入ってるであろう荷物を両手に持ち、俺たちに会釈をして
入院患者の病棟のある方へ歩いて行った。きっと、家族の
着替えやなどを取りに帰っていたのだろう。化粧もせず、
髪も梳かさずにいたその姿は、茜の母親と重なった。
違うのは、顔色だけ。会釈をする余裕が彼女にはあった。

静かに開いた扉へ、その女性とすれ違うように
入った瞬間、俺は泣いた。もう限界だった。
唯一残っていた理性の歯車が壊れ、堅牢を保って
いたかに見えた城は瓦解し、完全に押し潰された。
袖を握る由貴ちゃんの力が一層強くなり、微かな
呼吸音と震える肩が視界の端に見えた。

砂浜に書かれた文字を波が消すとき、海は
謝ったりしないはしない。割れた鏡をどんなに
正確に繋ぎ合わせても、元の姿は映らない。

病院の外に出ると、俺は水たまりに写った空を踏みつけた。
2007/11/22/Thu 06:00:52   十六夜~月下天真~/CM:0/TB:0/



  だい
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2011/08/29/Mon 15:48:44   十六夜~月下天真~/CM:2/TB:0/



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